【完】隣の家のオオカミさん
ギリギリ二人がすれ違うことができる。この狭い階段を上るためどちらからともなく自然に手を離した。
先に階段を上りきった大上くんは部屋のドアの前まで行かず、すぐにこちらに振り返った。
階段あと一段残して、わたしは大上くんを見上げる。
……今、言ってもいいですか。
「洸汰さんとは何もない。何の関係もない」
「それマジで言ってんの」
「ずっと好きなのは──……」
残りの距離をも縮めて思い切りその胸に飛び込む。
傷ついた過去があって今の大上くんがいて。
わたしが全部受け止めるから。
だから、もう離れたくないよ。
「大上くんがずっと好き。好きだよ……っ」