【完】隣の家のオオカミさん
──とうとうやってきたバレンタイン当日。
「千絵ありがとうっ! 本当にありがとね」
「いいえ、どーいたしまして。ちゃんと前向いて歩いてよ? せっかく頑張ったのに渡せなかったら笑えないからね」
「うん、大丈夫! さすがに道ばたで転んだりはしないよ!」
千絵はわたしがどこかで転んで、チョコが入ったこの紙袋を潰してしまうのではと心配しているんだね。
さすがにそんなことしない。
ドジっ子キャラじゃないし、わたし。
わたしもう20歳ですよ?
「バイバーイ!」
「後ろ向きで歩かない!」
「あはは。はいよー」
笑いながら手を振って千絵に背を向け、わたしは歩き出した。
本番も千絵の家で一緒に作ったんだ。
一緒に作ったって言っても同じ物を作ったわけではない。
千絵はやっぱり凝ったものを作っていたなぁ。