腕枕で眠らせて



ピピピピピ…



水嶋さんの胸元から、電話の着信音が聞こえた。



…こういう事もある。大人だもの。

ましてや水嶋さんは忙しい人だもの。仕方ない。



「すみません、ちょっと失礼します」


そう頭を下げて部屋から出た水嶋さんを、私は表情に出さないようにしつつ諦めの気持ちで眺めた。



数分後に戻って来た水嶋さんは、やっぱり困ったような複雑な顔をしていて。


「お仕事ですか?あの、私の事は気にしないで下さい」


私は、無理矢理にでも笑ってそう言うしかなかった。


「すみません…お店、バイトの子が急に休みになったみたいで玉城さんから連絡があって…」


本当に申し訳なさそうに水嶋さんが言う。



そんな顔、しないで欲しい。

喜ばせたくて連れてきたのだから。

そんな顔させるつもりじゃなかったんだから。



「お仕事じゃ仕方ないです。また、お時間出来たらご一緒しましょう」


…これで良かったのかも知れない。

近くなり過ぎちゃいけないって、佐知みたいな神様が言ってるのかも知れない。


「……鈴原さん……」



「いってらっしゃい、水嶋さん。

…それから、お誕生日、おめでとう。水嶋さん。」



―――ズキン


胸が、切ない。




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