腕枕で眠らせて
「……すみません、ちょっと失礼します」
水嶋さんは意を決したように突然そう言うと、私の目の前で電話をかけ始めた。
「…もしもし、山下さんですか?水嶋です。
急で大変申し訳ないんですが今日の夕勤出られないでしょうか?
…ええ、すみません。どうしても外せない用事がありまして。
…はい。そうですか、ありがとうございます。後日、お休みの方シフト調整しますんで。
はい。ええ。本当にありがとうございます。それじゃあお願い致します」
大きな事をやり遂げたような表情でフーっと大きく息を吐き出して通話を切った水嶋さんを、私はポカンと見ていた。
そして水嶋さんはそんな私の方を向くと
「…今日だけ……誕生日って事で、ワガママ言っちゃいました」
ちょっと困ったようにはにかんで、頬を赤らめた。