腕枕で眠らせて
トントン、と襖をノックする音で、私は跳ねるように水嶋さんの身体から離れた。
「ご注文お決まりでしょうか?」
スッと襖が開かれ現れた和装の従業員さんが部屋に進み入ってオーダーを聞いた。
「あっ、え、えっと。あの、コースを二人前と。あ、水嶋さんお酒大丈夫ですよね?えっとお酒も二つ」
すっごい挙動不審。
突然現実に戻されたみたいで顔が熱くなる。
従業員さんのやけに落ち着いた接客がなんだか余計に私を焦らせる。
「失礼致します」
そう言って従業員さんが襖の外へ出ていったのを見届けてから、私はフゥっと息を吐き出した。
振り返ると、水嶋さんが口元に手を当ててクスクスと笑っている。
「…笑わないで下さいよ」
「ふふふ、あんなに慌てる鈴原さん初めて見ました」
嬉しそうにクスクス声をたてる水嶋さんの視線に、再び私の頬が熱くなる。
恥ずかしくてちょっとむくれながら座布団に座った私に、水嶋さんは綻んだままの笑顔を向けて言った。
「好きです、鈴原さん。貴女の事がとても」