腕枕で眠らせて
法事と言えど十三回忌ともなれば、故人の冥福を祈ると云うよりは稀な親類の集まる為の口実、と感じるのは私だけじゃないだろう。
そんな事を憂う、青森の空の下。
「美織ちゃん、立派なお嬢さんになったわねえ!幾つだっけ?あら、もうそんなに!?やだ、私ったらまだハタチくらいかと思ってたわぁ!」
「仕事は今何してるんだ?え?サン…?ああ、手芸か。へえ、流行りなのか知らんがそんなので食っていけるのか?」
「そろそろ美織ちゃんもいい人見付けなくちゃね。子供産むなら早い方がいいって、ほら、テレビであの、なんとかって先生が言ってたわよ」
がんばれ私の口角挙筋。
フルパワーで浴びせられる親戚の不躾で遠慮の無い会話に、私は持てる筋力を口角に集中させてニッコリと交わした。
二年前までは仕事を理由に避け続けてた親戚の集まりも、融通の効く自由業では逃れる事も出来ず。
久々に顔を見せた妙齢の私は、伯母や伯父にとって格好の話題のネタになってしまった。
私と入れ替わりで、今年から堂々と仕事を口実に逃げ仰せた弟が憎い。
晩餐の用意を手伝うふりをして、既にビールと煙草の匂いが充満する広間を抜け出した。