腕枕で眠らせて



すっかり暗くなった庭の隅っこにしゃがみ込んで、フゥと一息つく。


お母さんどうかしてる。何が嬉しくて青森くんだりまで見合いに来なきゃいけないのよ。


ズーンと重くなる気分を振り払うように鞄を漁って、スマホに助けを求めた。


「あ…メール来てる」


ほらね、スマホは私を裏切らない。



スマホに表示されてるメールの着信表示は

【水嶋紗和己 受信1通】

たったこれだけの情報で、私の胸はほっこり満たされていく。



逸る気持ちで画面を指で叩くと、紗和己さんの声が聞こえてくるような丁寧な文面が表れた。



【お疲れさまです。青森はどうですか?この時期はもう夜は冷えるんじゃないでしょうか。風邪などひかないよう御自愛して下さいね。

東京は今日は雨でした。これから秋雨の季節に備えて、お店にレイングッズをちょうど入荷したところです。落ち着いた萩色の傘がオススメで、とても綺麗で僕が欲しいくらいです。

良かったら今度、植物園に行きませんか。萩が満開の筈です。美織さんと一緒に季節の花を愛でられたら素敵だなと思います】




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