腕枕で眠らせて
…もう。この人はどうして。
どうしてこんなに温かいんだろう。
遠く離れた地にいても、こんなに私を温めてくれる。
…良かった。あの時、彼の胸へ飛び込んで。
すくんだ心をはね除けて情熱を信じて。
本当に…良かった。
どこからか犬の遠吠えが響く夜の空に、視線を泳がせた。
空気が澄んでいて星がよく見える。
―――紗和己さん。
こちらは星がよく見えます。
空気が澄んでいてどこまでもどこまでも空が見えます。
キラキラと星が綺麗です。
紗和己さん。貴方と見たいです。
星も、花も、空も、海も。もっと、もっと。
貴方の隣で、沢山の景色が見たいです。
こんな気持ちになれる日が来るなんて思わなかった。
目に写る景色が前よりずっとずっと美しく見えるこんな日が。
ありがとう。紗和己さん。
一歩踏み出せる日を、ただ手を差し伸べたままずっと待っていてくれて。
怖さより、信じる心を思い出させてくれて。
本当に、ありがとう。
私は満点の星空の下で、遠い東京の空の下にいる恋人に向かってメールを打った。
帰ったらどんな話をしよう。お見合い薦められたって言ったら驚くかな。お土産の林檎はいつ届けにいこう。
ほっこり温かくなった胸は、再び煩い親戚の元へ戻っても温かいままだった。