腕枕で眠らせて
…………あっ。
激昂して思わずポロリと言ってしまった。
「あら!あなた、お付き合いしてる人がいたの!?どうして言わないのよ!」
しまった、と口をつぐんだ時には手遅れだった。
「今度うちへ連れてらっしゃい!お父さんにも言っておくから」
あーもう。これだから言いたく無かったのにぃ。
付き合ってまだ一ヶ月も経っていない、キスもハグさえもしていない相手を、どうして両親に紹介出来ようか。
「鈴原さん?元気無いですね」
私に漂うドンヨリとした空気を、紗和己さんは敏感に察知する。
「えっ、そんな事無いですよー水嶋さん」
自然と八の字に下がっていた眉毛を上げてニッコリと微笑んだ。
「それより、ほら。これ自信作なんです。ハロウィン向けのオレンジベースのサンキャッチャー。もともと幸せを呼び込むおまじないのインテリアですから、魔除け的な側面もあって。こういうお祭りにはうってつけかなって」
「可愛いデザインですね。これは若いお客さんに人気が出そうです」
普段より饒舌気味の私の説明に、紗和己さんは素直に頷いてカウンターに置かれた新作のサンキャッチャーを見つめた。