腕枕で眠らせて
本日はお仕事モードの紗和己さんと私。
お互いを名字で呼び合うのも仕事とプライベートのメリハリを付けるためで、別にすぐ側で閉店作業をしている玉城さんに隠してるからってワケでは無いのです。
「そうですね…季節モノだから様子を見ながら入れましょう。まずは各店舗に二つずつ。その後、売れ次第同じ物を追加入荷いいですか?」
「はい、ありがとうございます」
自営業の私は開発から営業まで自分でこなさなくてはいけない。新作が出来たらこうして売り込みに来るのも仕事だ。例え相手が紗和己さんでも。
…本当はちょっと、紗和己さんに会いに来たかったのと、“キチンと仕事してる気分”ってのが欲しかったからなんだけど。
つまりそれは、昼間のお母さんとのやりとりでグラグラに不安になった色んなものをきっと回復したかったんだと思う。
そんなワケで紗和己さんにアポを取ってから閉店後の【pauze】に駆け込んだ私は、勝手に自分の気持ちを満たし、仕事と気が済んだところで帰る事にした。
「それじゃあ私、帰りますね。お忙しいところ失礼しました」
言いながら私は、きっと紗和己さんの事だから『送ります』って返って来るんだろうなと考えていた。
ところが、その予想はちょっとだけ外れて
「僕ももう店でする事は済んだんで、一緒に帰りましょう」
と云うもっと嬉しい返事が返って来た。