腕枕で眠らせて



「お先に失礼します」


二人でまだ店に残ってる玉城さんに挨拶をして表へ出た。


途端に頬に触れた冷たい夜風にもう夏じゃないんだと云うことを教えられる。



「このまま直帰って、玉城さんは送ってかなくていいんですか?」


気になっていたけど店の中では聞けなかった事を聞いてみた。


「玉城さんは原付きで通勤してますから。大抵、閉店作業は彼女が担当だし僕も毎日店に来てるわけじゃないんで、自力で安全に通ってもらった方がこちらも安心ですしね」

「ふーん…」


それもそうか。紗和己さんだって忙しいのに毎日毎日、従業員の送迎なんてやってられないものね。


「従業員の安全を考えるのも僕のつとめですけど、でも誰これ構わず送ってるわけじゃ無いですよ。よほど遅くなった時とか、未成年のバイトの子とか…あとは、僕がよっぽど心配してる人だけです」


そう言った紗和己さんは、ちょっと照れ臭そうに口元を押さえていて。


「以前、玉城さんが『誰でも』って言ってたの、美織さんが誤解されてたら困るなって思って…」


そうモゴモゴ言った彼を見て、私の胸と顔が熱くなっていった。



赤い顔をして俯いてしまった私に、紗和己さんは


「…車と電車、どちらで帰りますか?」


と聞いた。




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