腕枕で眠らせて
街灯の光が映り込むほど大きく見開いた私の目には、いつもと変わらない紗和己さんのゆったりとした笑顔が映る。
「僕はまだしたくないって言ったら、怒りますか?」
「えっ」
思ってもいなかった台詞に、唖然とした。
なのに紗和己さんはそんな私を見てニコニコするばかりで。
「今日の美織さん、なんだか焦ってますよね?もったいないですよ、そんな気持ちでしてしまったら」
「………」
見透かされてて。私はついに口をポカンと開けてしまった。
「美織さん、人生は長いですよ。
すごくすごく、長いです。なのにそんな幸せな事を、焦って駆け足で過ぎていったら勿体無いです」
「…紗和己さん…」
言い含めるように話す紗和己さんの口調は、けれどそれでも温かくて。私は自然と彼の言葉に耳を傾けた。