腕枕で眠らせて



「送ってもらったなら紹介ぐらいしなさい。子供じゃないんだから」


私は手元の細かい作業に一区切りつくと、ピンセットとビーズ硝子をテーブルに置いてお母さんの方を振り向いた。


「あのね、お母さん。私、焦らない事にしたの。お母さん達は気を揉むかも知れないけど、でも、マイペースでやるって決めたから」


「あなたねえ、そんな呑気な事…」


「焦らなくてもいい人を見付けたの。どんなに待たせても必ず一緒に居てくれる人を。これからもずっとずっと隣で待ってくれる人を。

だから、いつか必ずお母さん達にも紹介するから、待っててよ。

娘が大切な人を連れてくるなんて、そんな幸せなコト焦って済ませちゃもったいないじゃない」



そう言って笑った私に、お母さんは目をぱちぱちさせた後もひとつ溜め息を吐きながら


「…せめてお母さんがおばあちゃんになる前には紹介してちょうだいよ」


と言って、呆れたように笑った。



そして、一旦部屋から出ると淹れたての紅茶を持ってきてくれて


「…今度は安心してお付き合い出来る人なのね」


と、テーブルにカップを置きながら静かに言った。


「うん。色々心配掛けてごめんね」


その紅茶をありがたく頂いた私に、お母さんはただ黙って笑うと頭をポンポンと撫でてくれて、部屋から出ていった。








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