腕枕で眠らせて
薄布のカーテンのように陽を柔らかく遮る明るい霞色の空の下、渇いた風が足下で時折くるくると遊びだす。
紛れもない、冬。
そんな早い冬の訪れを感じさせる11月のある日。
ひんやりした空気とは裏腹に私の心はホカホカに温かかった。
「情緒あるなぁ…小江戸の名は伊達じゃ無いですね」
「日光や浅草なんかとはまた違った感じの情緒ですよね」
冬色に染まった蔵造りの町並みにうっとりと感心しながら、紗和己さんと足拍子を揃えて歩く。
来春に迫った新店舗の開店準備に追われ忙しい毎日を送る紗和己さんの貴重な休日。
そんな稀少な一日を彼はこうして私と過ごす時間に充ててくれている。
それだけでもう私は幸せで、朝から胸がホカホカするのが止まらない。
二人して行きたいと思っていた江戸情緒の溢れる町にこうしてはるばるやって来て(ウソ。電車で一時間の手軽さでした)のんびりプチ観光のデート。
何一つ不満の無い今日の一日に、私は神様に感謝したいくらいの幸せを噛み締めていた。