腕枕で眠らせて
「芋焼酎、美味しい。私初めて飲んだ」
「僕は飲んだ事あるけど、ここのは凄く飲みやすいですね。うん、美味しい」
「お父さんにお土産に買っていこうかな」
博物館を見てお店を廻って美味しい名物を食べて。
紗和己さんと過ごすそのひとつひとつが温かく胸に降り積もって行く。
「わあ、紗和己さん。あれ、乗ってみたい!」
子供のようにはしゃいでしまった私に目尻を下げて紗和己さんは頷いた。
初めて乗る人力車に興奮気味の私と、それを嬉しそうに見つめる紗和己さん。
その視線に胸が鳴る。きゅぅって。
そんな眼差し、反則過ぎて見つめ返せない。
二人を乗せた人力車は冬の匂いのする風を纏いながら時代を遡った町をゆったりと魅せてくれた。
ガラガラと車輪の音もふわふわと流れる景色も。このまま永遠に続けばいいのに。
今か昔かよく分からなくなった不思議な空間で。
永遠にコート越しの貴方の温もりに隣り合っていたい。
そっと見たすぐ側の紗和己さんの横顔は、風を受けた髪がサラリと額になびいて儚いほど綺麗。
…触れたいな。
そんな自分の熱に気付いて、改めて実感させられる。
嗚呼、私、とても恋してる。