腕枕で眠らせて
「はい、終点です。ご利用ありがとうございました」
終点に着いた人力車から降りる時、紗和己さんが手を差し伸べてくれた。
「美織さん、気を付けて下さい」
「うん」
温かくて大きなその手を取って地面に足を降ろした私は、その手の心地があまりにも好いから離せなくなってしまって。
「……美織さん?」
「………」
そのまま歩き出そうとすると、紗和己さんは無言のまま軽く手をほどき、指を絡め直して固く私の手を握ってくれた。
嬉しくて思いっきり口角を上げて笑んだ私と、こちらを向いて少しはにかんで幸せを口元に滲ませた紗和己さんの視線も絡まって。
きゅう、きゅう、胸が鳴る。
恋独特の胸が痛くなるほどの甘い疼きを抱いて
私たちは冬の町を歩き出した。
ずっとずっと、歩いていった。