腕枕で眠らせて





たかが手を繋いだだけで、切ない程に幸せな恋。


大人なのに甘酸っぱい。

そんな贅沢な日々を送っていると、自然と外見にもそれが現れるようで。



「あれ?美織なんかキレイになったね?」


それは数ヵ月ぶりに会った友人に第一声でそう言わせてしまう程の威力だった。


「あはは、いきなりありがとう愛子」

「や、ほんとほんと。前に会ったときと全然違う」


久方ぶりの再会を果たした愛子は私から目を離さないまま、テーブルを挟んだ向かい側に座った。


「とりあえず、乾杯しよっか」


店員さんにビールを頼みつつおしぼりで手を拭いた愛子は、空いている席にどかっと鞄と書類の入った封筒を置いた。


懐かしい社名入りの封筒。二年前までは私もよくこの封筒を持ち帰っていたもんだ。


「おつかれさま。相変わらず忙しいみたいだね」

「まあね。でもやってる事は美織がいた頃と何も変わってないよ。代わり映えの無い仕事で嫌になっちゃう」


疲れを滲ませながら吐き出した友人に労いの気持ちを込めて、私は運ばれてきたビールで乾杯をした。



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