腕枕で眠らせて
「大した事じゃ無いんです。ただちょっと新しいお店の事で予定通りに行かない事が幾つかあって」
メニューをオーダーするのも忘れて、私は身を乗り出すように紗和己さんの話を聞いた。
「だから、美織さんの顔を見て元気を貰おうと思って。突然会いたいなんて、甘ったれたコト言っちゃいました」
そう言ってふわっと微笑んだ紗和己さんの笑顔は、本当に安心した顔とまだ少し疲れてる顔が同居していて。
切なすぎて。抱きしめたくて。
疲れていて当然のはず。沢山の責任を抱えてる人だもの。きっと私の知らない所でもっといっぱい苦労してるはず。
「…紗和己さん…」
支えたい。慰めたい。刹那でも、癒したい。
私を呼んでくれた貴方を。
辛いときに私を必要としてくれた貴方を。
耐えきれなくて、上手く言葉に出来なくて、紗和己さんの大きな手をぎゅうっと自分の両手で包んだ。
それを受けとめるようにゆっくりと瞬きをして、それからこちらを見つめた紗和己さんがもう片方の手をそっと私の顔に伸ばした。
「…美織さんは、元気でしたか…?」
長い指が撫でるように優しく
私からマスクを外した。