腕枕で眠らせて
たかが、自分の気持ち。
されど、自分の気持ち。
紗和己さんが涙を拭ってくれたから、どうにもならなかったモヤモヤがやっと晴れた気がする。
ファミレスを出て固く紗和己さんの手を握りながらスッキリした気分で澄んだ星空を見上げた。
大丈夫。私、紗和己さんが好き。何も後ろめたくない。
楷斗を心配したのはきっと、私に余裕が出てきたせい。
過去の恋愛を憎むだけじゃなくて、ちょっとは優しくなる余裕も出てきたから。
それは紛れもなく紗和己さんが隣にいるから。
ひび割れた心を慈しんでくれた紗和己さんが隣にいるから。
―――馬鹿楷斗。二度と会いたくないけど、元気でやんなさいよ。
遠い空に向かって大きく深呼吸した。
心で叫ぶように。
「美織さん」
呼ばれて振り向くと、紗和己さんも空を見上げていて。それからゆっくりと私の方を向いた。
頬に当たるひんやりした空気から守るように、そっと紗和己さんの手が私の顔を包んで。
ドキリと、胸が跳ねた。
けど
「眠れてますか?」
「えっ?」
真面目な顔をして聞かれたその質問に、私は自分の酷い肌を思い出して別の意味でドキリとする。
ああ、さっきの高級美容液が即効で効いてますように。
「実は…あんまり…。でも、多分今夜は寝られ…」
「美織さん、今夜は一緒に寝ませんか」
三度目のドキリが、一番大きく胸を鳴らした。