腕枕で眠らせて
とりあえず最低限の身なりを整えて紗和己さんの元へ戻ると、キッチンから続くダイニングのテーブルに完璧な朝食がセットされていた。
「どうぞ、冷めないうちに食べて下さい」
そう言って最後に紗和己さんがキッチンから持ってきのが焼きたてのトーストとカルピスバターだったりするから、これまた悔しい。完璧過ぎる。
淹れたてのコーヒーに、バルサミコ酢の効いたベビーリーフとトマトのサラダ。スクランブルエッグにはご丁寧にベーコンとマッシュルームまで入ってて。
美味しく頂いてるうちに、私はなんだかもう女として完敗してもいいような気持ちになってきた。
「紗和己さんスゴい。お嫁さんになって欲しい」
デザートに一口大にカットされたオレンジとリンゴを出されて、私はついに白旗を上げた。
私の完敗宣言に紗和己さんがコーヒーを吹き出しそうになって笑う。
「いきなりプロポーズされるとは思いませんでした」
「紗和己さん、多分私が今までに会ったどの女の子よりも女子力高いです。恐ろしい」
「ひとり暮らしが長いだけです。それに今日は美織さんがいるから当然張り切ってますよ。普段ならリンゴをウサギになんかしません」
それはそうだろうけど。
手元の硝子の器に入ったリンゴのウサギと見つめ合う。
けど絶対、紗和己さんはいい奥さんになれると思う。と、私はリンゴから目を離して部屋を見渡した。
ダイニングもキッチンも惚れ惚れするほど全く散らかっていません。