腕枕で眠らせて
けれど、拍子抜けするほど紗和己さんはさらりと答える。
「そうでもないですよ」
謙遜なのか、それとも私と彼の『モテる基準』が違うのか。
「紗和己さんほどカッコ良ければ彼女に困らなそうだけどな」
「まあ、いなかったワケじゃ無いけど…若い頃だけですね。大学以降は女性とお付き合いしてません。美織さんだけです」
「えっ!本当に?」
「本当です」
自分の彼氏に向かってなんだか興味本意丸出しの失礼な言い方をしてしまった気がするけど、でも、これは驚かざるを得ない。
だって紗和己さんほどのイイ男がなんで。
「ずっと仕事に夢中でしたからね」
私の頭の『なんで』は駄々漏れしてたみたいで、紗和己さんは視線を正面に向けたまま何も動じず答えた。
そして、ゆったりとハンドルを切りながらふっと表情を弛めると
「男の癖にロマンチストが過ぎるかも知れませんが、僕は恋人って作るものじゃないと思うんですよ」
少し照れくさそうに言った。
それを聞いて目をぱちくりさせていると、丁度信号でブレーキを踏んだ紗和己さんがこちらを向いて
「恋って、堕ちるものでしょう?」
真剣な眼差しに私を映して、呟いた。