腕枕で眠らせて



うわぁ。

こんな台詞、他の人が言ったら失笑ものだけど紗和己さんだから許せる。って言うか紗和己さんだから破壊力ハンパない。


けど、みるみる赤くなっていく私の顔を見た紗和己さんまであろうことか赤面しだし

「…今のは気障でしたね…って、朝から何を言わせるんですか」

信号が変わったのをいいことに思いっきり目線を逃げ逸らしてしまった。


「言った方が照れてちゃダメですよ、もう」

「すみません。僕、浮かれてますね…」


ああ、車内の温度が熱い。12月だけど。

最大限に照れてしまった二人を乗せて、車はホカホカになりながら冬の街を走る。


こういうのバカップルとかノロケとか言うのかな。

それはそれで悪くないんだけど。けど、そのせいでもうひとつ気になっていた事を聞くタイミングはすっかり失ってしまった。



何かとハイスペックな紗和己さん。

7、8年も彼女を作らなかった紗和己さん。

そんな紗和己さんが、どうして私を選んだんだろう。



聞いてみたかったけれど、今のタイミングでは車内の温度を上げる会話にしかならなさそうなので、やめておいた。







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