腕枕で眠らせて
激しく負の感情に呑み込まれていく私は気付かないうちに長い間立ち尽くしていたんだろう。
「鈴原さん。お店、閉めますよ?」
玉城さんに声を掛けられてやっと私は我に返った。
「あ…すみません、もう出ます。お邪魔しちゃってごめんなさい」
「それ、どうします?返品になるんで勿論持って帰ってもらうのが正しいんですが。確認もしたし、もし不用ならこちらで棄てておきますけど」
「…!?」
さらりと言った玉城さんの言葉に思わず表情を歪ませてしまった。
「硝子だし、割れてるから持ち帰るの危ないかと思って」
そう付け加えた彼女に悪意は無い、気を使ってくれたんだ、と自分に言い聞かす。
「…大丈夫、持って帰ります。梱包の見直しもしたいし…それに、割れても大切な私の商品ですから」
泣くのを堪えたせいで小声になった私の言葉は、玉城さんにちゃんと届いたかは分からない。
段ボールを閉じて持参してきた紙袋に納めた私を見て、玉城さんはパチ、パチと店内の電気を消した。