腕枕で眠らせて
揃って裏口から外へ出て、玉城さんが最後に鍵を閉める。
そのまま駐車場へ向かおうとする姿勢の良いショートカットの後ろ姿に声を掛けた。
「今日は…水嶋さんはお店に来てないんですか?」
「オーナーは今日は新店舗の打ち合わせに行ってます。返品の件については私から報告しておくんで大丈夫ですよ」
鞄から原付のキーを出して手の中で遊ばせながら、玉城さんはそう答えた。ただ。なんだろう、語調が強い気がする。
「お手数おかけします。お願いします」
そう頭を下げた私に
「お疲れさまです」
と軽く会釈を返してくれた時には、いつもの玉城さんだったけど。
陰鬱な気分で迎えた深夜に、私はやっぱりお詫びのメールを書いて送った。
水嶋さんへ。取引相手の鈴原として。
パソコンから送ったにも関わらず、その返事はすぐに返ってきた。【pauze】オーナーの水嶋さんから。
そしてその直後。
スマートフォンには恋人としての紗和己さんから、電話が掛かってきた。