腕枕で眠らせて



「本当にごめんなさい、水嶋さん…」


せっかく“恋人”として掛けてくれた電話に、落ち込んでいる私は上手く割り切れなくて“水嶋さん”と“紗和己さん”がゴチャ混ぜになってしまう。



「あまり落ち込まないで下さい。美織さんの梱包はいつも丁寧で完璧です。品質だって充分に信頼に値する。今回は偶々運が悪かったんだと思いますよ」


「けど、水嶋さんにも玉城さんにも迷惑掛けちゃって…」


「この商売やってて返品やら不良やらは避けて通れませんよ。

以前、海外から入荷した陶器が木箱に詰め込まれて全部破損してたなんて事もあったくらいです。それを先方に伝えたら『日本の郵送業者の運び方が悪かったんだろ』って突っぱねられちゃって。

それに比べたら今回の事は迷惑の端くれにもなりませんから」


電話の向こうで姿は見えなくても、紗和己さんは明るく笑ってそう言った。


笑い飛ばして私を元気付けようとしてるのが分かる。


これ以上メソメソするのは、きっと余計に紗和己さんに、水嶋さんに、迷惑を掛ける。心配を掛ける。


「うわぁ、それはスゴい話ですね。そんな風に突っぱねられちゃグウの音も出ない」


明るい声をお腹から絞り出し、一生懸命彼の励ましに応える。


立ち直れ私、元気出せ。


けど。


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