腕枕で眠らせて
濁っていた水がスッと、澄んでいく気がした。心の澱が大人しく沈んでいく。
「うふふ。分かりました、行きます。明日の夜、納品にお伺いします」
「お待ちしております」
クスクスの笑い声と一緒にそう言った電話の向こうの声は
水嶋さんで、紗和己さんで、優しい声だった。
郵送用の箱の中で、私の手元に返ってきた可哀想な硝子は
無惨に砕けても尚美しく。
けれど、私の手ではもう元には戻してあげられない事が
悲しい。