腕枕で眠らせて
「こんばんはー」
昨日掛けてしまった心配を払拭したくて、いつもより明るい声で挨拶をした。
けれど、私の元気は行く宛も無くそのまま虚しく消える。
「ああ、お疲れさまです」
薄暗い店内の隅で、昨日と同じように玉城さんがバインダーに記入をしていた。
「お疲れさまです…。あの…水嶋さんは…」
てっきり紗和己さんひとりだと思ってた私は拍子抜けするやら気恥ずかしいやら。
「オーナーは明日のクリスマス用のラッピングバッグが足りなくなっちゃったんで二号店の方まで取りに行ってます。すぐ戻るって鈴原さんに伝えとくように言われました」
「そうですか…ありがとうございます」
こちらを見ないままサクサクとそう言った玉城さんに、ちょっと萎縮しながら礼を述べた。
…すぐ戻るとは言え。えっと。どうしよう。私、こんなとこに突っ立ってたらきっと邪魔だよね。
店内をキョロリと見回して、いちばん玉城さんの邪魔にならなそうな所までソソソと移動した。
なるべく目立たないようにしていようと思った。お仕事の邪魔しちゃ悪いし、納品に来たとは言え半分は紗和己さんに会いに来たヨコシマな気持ちがそうさせた。
けれど、玉城さんは壁際に溶け込んだ私を振り返ると
「ああ、納品でしたっけ?すみません、今、検品して伝票出すんで品物出してもらえますか」
と、手にもっていたバインダーを置いてサクサクとこちらへ向かってきた。