腕枕で眠らせて
…なんとなく。今日の検品は紗和己さんにして欲しかったと思うけど。
それはあまりにも私情じみていて口には出せない。
シャラシャラと硝子の擦れる音をたてて、玉城さんが箱の中のサンキャッチャーを真剣にチェックした。
「今日は平気みたいですね。じゃあ無事納品って事で。今、伝票書きますから」
そう言ってショートカットの髪を項垂れさせながら玉城さんは納品伝票に日付とサインを書き込む。
そのわずかな沈黙がなんだかソワソワして、彼女の隣で口を開いた。
「あの…すみません、お忙しい時に手間取らせてしまって」
「いえ、別に」
私の気遣いは2秒で切って落とされた。
…昨日も思ったけど、私、あまりこの人に良く思われてないのかな。
別に殊更仲良くしたいワケじゃないけど、でも一応仕事で繋がってる以上は関係は良好な方がいい。
「た…大変ですね。雑貨屋さんはクリスマスの時期が一年で一番忙しいって、水嶋さんから聞きました。玉城さん店長さんだからきっと特に大変ですよね」
当たり障りのない時候ネタと相手を労う話題。多分、私のチョイスは間違って無かったはずだ。けれど。
「まあ毎年の事ですから、もう慣れました。一日中レジに出ずっぱりなのも、延々ラッピングするのも」
そう言ってクスリと笑った玉城さんの横顔を見たときにはホッとしたのに
「オーナーと四六時中一緒にいるのも」
そんな一言が来るなんて。
思ってもいなかった私の背中を、生ぬるいモノが駆け昇る。