腕枕で眠らせて
―――何してるんだろう。私。
「……もしもし、紗和己さん?」
何考えてるんだろう。私。
「…電話、電源切ってました?何回掛けても繋がらないなぁと思って…」
自分でもよく分からない。
「…そうですよね、病院ですもんね」
いやだ。なんなの。
「別に、大した用事じゃないんです。ちょっと声が聞きたかっただけ」
いやだ。いやだ。嫌な言い方。嫌な口調。
「…お見舞い…一人で行ったんですか…?」
やめて。やめて。私のこんな声、聞かないで。
「なんでも無いです。紗和己さん、これからお仕事でしょう。会いに来なくて平気ですから」
やめて。紗和己さん、聞かないで。
「またメールします。それじゃ、お仕事頑張って下さい」
通話を切ったスマホを握る手は
びっしょりと汗をかいて、震えていた。
汗で濡れたスマホに、パタパタと涙が落ちて
暗転した画面に、自分の泣き顔が写った。