腕枕で眠らせて
「…どうしたんですか、美織さん」
とても困った顔をして、紗和己さんが私の顔を覗き込む。
ズルい。そんな表情だって、全部うそつき。うそつきなのに。
「…もう…やだ……
…もう…やめて…お願い……」
項垂れて、顔を覆った。自分を守るように。
「美織さん…!?」
「…もう、やだ。もう……これ以上、傷付けないで……」
もうやだ。もう、いやだ。
傷付きたくなかったのに。痛い思いはもう二度としたくなかったのに。恋なんかしないって思ってたのに。
「…美織さ…」
「信じてたのにぃっ!!」
叫んだ声は耳を塞ぎたくなるほど冷たくて
それは、硝子の割れる音に、似ていたと思う。
「紗和己さんの事、信じてた!信じてたのに!!どうして!!どうして嘘ついたの!?」
「美織さん…っ…」
私を呼ぶ紗和己さんの声も
砕けた硝子の音に似ていて。
傷付け合う音ばかりが、車に響き合う。