腕枕で眠らせて



あの人と笑い合ってずっとずっと過ごしたお店に、どうして私を呼んだの?


ほんの少し前まであの人を愛しく呼んだ声で、どうして私を好きだと言ったの?


愛を重ね合った人の目の前で、どうして私を恋人扱い出来るの?


ねえ。


お店で、お見舞いで、ふたりきりで何を語り合ったの?


私より先に私より近くで、ふたりで未来を語り合ったの?


ねえ。



どうして、嘘をついたの。

何を、私から隠していたの。ねえ。


ねえ。



「…どうして…っ…嘘、ついたの…

…どうして…隠してたの…っ…」


顔を覆った指の隙間からポロポロと涙が堕ちていく。


息が苦しくて、声が上手く出てこない。


「美織さん……嘘って…何を…」


紗和己さんも、苦しそうに呟く。



お願い。お願い。どうか。

少しでいいから、私を楽にして。




「…玉城さんと…付き合ってたって……どうして隠してたの……」




どうか。せめて。

私のための優しい嘘だったと言ってくれたら。

まだ貴方にすがる事が出来るのに。




「…玉城さんと?何の事ですか?」




『気のせいじゃない?俺、二股とかしてないし 。考えすぎじゃん?』




どうして。


あの時と同じ結末を。








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