腕枕で眠らせて









―――ゆったりと穏やかな恋は


いつのまにか私の身体いっぱいに満たされていて


温かくて温かくて幸せ心地な毎日に浸っていたから


それが本当は真っ黒に濁っていたと教えられたら


私の中はどろどろに濁って身動きが取れないほど澱んで、死んでしまうと思う。










白い包帯の巻かれた手を、まるで自分のじゃないものを見つめるような気持ちで眺めた。



硝子をたくさん割った日に負った傷。


粉々になった硝子はもう戻らないのに、私だけ治療を受けて回復するのはなんだかズルい気がする。



潔癖に真っ白な包帯を眺めながら、膝を抱えた体勢からコテンとそのまま横に倒れてみた。



目に映る景色は90度横になってもいつもと変わらない私の部屋で。



ただ、部屋の中央にある作業台代わりのテーブルからは

サンキャッチャーを作るための道具は全て無くなっていた。




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