腕枕で眠らせて





あれから、どれくらいの時間が過ぎたんだろう。



放ったらかしたスマホがずっと鳴ってたような気がする。


パソコンが何回も着信を知らせてたような気もする。


それらが静かになってから随分経った気がするけれど

包帯を巻いた左手がまだジクジク痛む事を考えると、そんなに経っていないのかも知れない。




手を怪我した事を理由に、サンキャッチャーの受注は一旦停止した。



私自身とても作れないと思ったのもあるし、素手で硝子を割り砕いた私にまた硝子を触らせる事を母が許さなかった。


メールやサイトの処理は私の怪我を気遣った弟が全部やってくれた。



こうして、私の生活からサンキャッチャーが消えた。



幸せな恋が消えて、幸せな光も消えて。


私はどうやってここから立ちなおればいいんだろう。









目を閉じて眠りきれない頭で夢見るのは


温かくて大きな手の事ばかり。



初めて会った日から、私が傷付かないように守ってくれた手の。


もっと大切にして下さい、と些細な傷すら心配する手の。


切なくて安心する笑顔で指を絡めた手の。


冷たい風から私を守って頬を包んでくれた手の。


大きくて優しい手の、夢を見る。



温かくて優しい貴方の、夢を見る。



「…紗和己さん……」




失いたくなかった手の、夢を見る。






< 213 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop