腕枕で眠らせて
たくさんのものを失って、茫然と悲しみにさ迷ってるだけの私の日々に、来客があった。
「美織!今日は泊まっていくからね!」
「………え、佐知?」
ノックと同時に部屋に入って来た人物は、私が事態を把握する前にドサッと正面に座った。
「佐知…どうして」
なんで佐知がここにいるんだろう。私、呼んだっけ。そんな事も覚えてないほど私バカになっちゃったっけ。
隈の乗った目を見開いて驚く私に、佐知は噛みつかんばかりに怒り出した。
「あのねえ!突然硝子の発注止めるなんて電話が弟くんから掛かって来て、私、すっごいビックリしたんだからね!
どうしたのかって無理矢理問いただしても弟くん『姉ちゃん失恋してバカになって怪我した』とか意味わかんない事言うし!」
肩を掴まれながら話されたせいで頭が揺れる。あいたた。てか失恋してバカになったってかなり酷いけど言いえて妙。
「…まさか、それで…来てくれたの?」
「当たり前でしょ!埓明かないからここまで来ちゃったわよ!そんでもっておばさんに事情も聞いたからね!」
佐知、すごい。
すごいバイタリティ。そんでもって
「なんでそんな辛い事あったのに相談しないのよ!あんた引きこもりなんだから私に頼らなくってどうするの!?」
すごい、大好き。
「佐知……」
「今日は泊まるからね。旦那の晩御飯のカレーも作ってから来たんだから。
だから一晩中、美織の話聞いてあげるから」
しがみついて泣く私の頭を撫でながらそう言う佐知は、最高に男前で最高にいい女で、私の胸をほんのり温かくした。