腕枕で眠らせて



「……えっ、なんで…」


「いくら従業員が噂してても女店長がそう宣言したとしても、社長は肯定してないんでしょ」



肯定はしてない。

けれど。だからこそ。



「…どうして、そう思うの?」


「うーん、ごめん。私にもよく分かんないや。なんとなく思っただけ。

何も関係がなければ女店長もそこまで美織につっかかって来たりしないもんね。うん、私の考え違いだな、これは」



瞬きを繰り返す私を置き去りにして、佐知は缶に残っていたカクテルを飲み干すと


「わ、もう2時だ。そろそろ寝よう」


と言って腰をグイっと伸ばしながら立ち上がった。








佐知の静かな寝息が聞こえる。

電気を消して暗闇になった部屋の天井を、私は寝付けない眼でじっ、と見つめていた。



…もしも…


本当に二人が付き合ってなかったとしたら。



傷付いたのは、誰。




ズクリと痛む左手を無意識に撫でた。



信じる。信じない。誰が。誰を。


考えるにはまだ回復出来ていない思考を無理矢理シャットダウンして、きつく目を閉じた。早く朝が来るようにと祈りながら。






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