腕枕で眠らせて
昨夜のお喋りとアルコールが効いたのか、佐知と二人揃って目が覚めたのは朝の9時。
既に家族全員出掛けた家で佐知と一緒にのんびりと遅い朝食を取った。
「美織の事心配だけど、そろそろ帰んなきゃ。工房の仕事もあるし、旦那の世話もあるしね」
「ごめんね。わざわざ来てくれてありがとう。本当に嬉しかった」
「また電話するから。美織が元気になるまで幾らでもお喋り付き合う。それでも寂しかったら呼んで。いつでも駆け付けるから」
そう言って笑う佐知は本当に最高の友達で最高にいい女だと思う。彼女の旦那さまが羨ましいぐらい。
少し寂しい思いで佐知の帰り支度を手伝っていると、ピンポーンと、来客を知らせるチャイムが鳴った。
「宅配かな?」
そう言い残し廊下に出た私は、インターホンのカメラを見て動きを止めた。
「…っ、」
息を飲む音が自分の中に聞こえる。
2度目のピンポーン、が鳴って佐知が廊下にひょっこり顔を出した。
「美織、出ないの?鳴ってるよ?」
けれど、インターホンの前で金縛りにあってるような私の姿を見て、佐知が驚いて駆け寄ってきた。
「美織?どうしたの?」
私の見つめるものと、その視線を追った佐知の見つめるものが重なる。
「…え…もしかして、この人…?」
インターホンの小さなモニターにはスーツ姿の長身の男性が
紗和己さんが、映っていた。
―――美織さん。
その唇が、私の名を呼んだ気がした。