腕枕で眠らせて





どう…しよう…



包帯を巻いた左手が、それを押さえる右手が、無意識に震え出す。

震える?ううん、揺れてるんだ。自分の大きすぎる心音に。



「美織、この人がその社長だよね?」


佐知が私の顔を覗き込んで聞いた。

言葉で返せなくて、おずおずとただ頷く。


そんな私の様子とモニターの画面を交互に見て、佐知が突然私の腕を掴んだ。


「美織!出なくちゃ、出なくちゃ駄目だよ!

社長、わざわざ来たって事は話したい事があって来たんでしょ?ちゃんと聞かなきゃ!」


「でっ、でも、もう…!!」


「また何年も引きこもる気!?

いいじゃん!話聞いて納得したら仲直りして、そうじゃなければ一発ひっぱたいてやれば!

ひとりでメソメソしてるよりその方がずっといいって!!」



ものすごい説得力で、私の臆病風を吹っ飛ばした佐知が腕をグイグイと掴んで階段を降りていく。



「えっ!?出るって、直接!?」


「当たり前!顔見ないで話してどーすんの!」



止める間もなく佐知は私を玄関に押し出し、その勢いのまま扉を躊躇無く開けた。



「ちょっ、待って…!」



「えっ」



まだ心の準備が出来ていない私と、インターホンからの返事を待っていたと思われる驚いた顔した紗和己さんの視線が、扉を開けてすぐにぶつかった。


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