腕枕で眠らせて
再び私に視線を戻した紗和己さんが、もう一度ゆっくり喋りかける。
「美織さん、聞いて下さい」
逃げようにももう後ずさる事すら出来ない。
唇を噛み締め、目をぎゅっと瞑りながらも、コクリと頷いた。
「僕は…玉城さんとは付き合っていません」
硬く閉じていた目が見開いて、自分の足下を映した。
私の驚きに構わず、紗和己さんは言葉を続ける。
「玉城さんから、全部聞きました。彼女が貴女に何を言ったのか、全部」
驚き怯えながらゆるゆると顔を上げた。
私を見つめてる紗和己さんと目が合った。
けれど紗和己さんは私に向かって真っ直ぐに頭を下げて、重なった視線は外された。
「玉城さんが言った事は真実ではありません。僕は彼女と付き合った事もないし、二人きりで出掛けた事もありません。
けど…彼女にそんな嘘をつかせた責任は僕にもあります。申し訳ありません」
サラリと垂れた髪を戻しながら紗和己さんは頭を上げて私に再び目を向けた。
一拍、短い呼吸をして彼が続きを紡ぐ。
「玉城さんは…僕の事が好きで。
…4年前に、彼女から告白をされた事があります」