腕枕で眠らせて



「僕は申し訳ないけど彼女を恋愛対象とは見られなかったので、その時はお断りしました。

玉城さんも気にしないでと言ってくれて、その後は普通に接してくれて。

4年も前の事だし、もう彼女も僕に何の感情も無いと思っていました」



そこまで話して、紗和己さんは一瞬辛そうに瞳を伏せた。



「…僕は、何も分かってなかったんです。

玉城さんが僕と美織さんをどんな気持ちで見ていたのかも、その矛先が全部美織さんに向いてしまっていた事も」



玉城さんの。


あの快活な人の心が少し見えたような気がしたのは、きっと。


紗和己さんの紡ぐ声に色々なものが滲んでいるから。



「以前、納品されたサンキャッチャーが割れていたのも…玉城さんが意図的にやったと。

僕はそれを聞いて、彼女を強く責めてしまいました。美織さんの心を壊されたみたいで許せなかった。

…けど。そうさせるまで玉城さんを傷付け続けていたのは…僕の方だったんです。

玉城さんを傷付け、それに気付かず貴女を守る事も出来なかった…本当に…申し訳ない」




嫉妬。

玉城さんが私に向けていたもの。

それはきっとなんとなく気付いていたけれど。それは私が思うよりずっと大きくて重いもので。


…4年の年月に。

今度は私が、嫉妬する。



「…紗和己さん……付き合う人、間違えてるよ。

5年も側に居て4年も想ってる玉城さんと、どうして付き合わないの?」



汚ならしい私の声に、紗和己さんの表情が曇る。


「美織っ!!」


後ろから佐知の叱咤する声が飛ぶ。




「だって…!!

なおさら信じられないよ!!そんなに長く居て!恋愛感情もあるのに何も無かったなんて!!」



私の中の濁った澱が溢れ出す。


その澱は、何度も割れた硝子で出来ていて

粉々で、積もりすぎて、何も見えない。




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