腕枕で眠らせて



もう、おしまいなの。


それが嘘でも真実でも、信じられなくなってしまった私は


もう、透明には戻れない。

もう、貴方の胸には飛び込めない。



「…ごめんなさい……私はもう…何も信じられない…貴方が何を紡いでも…」



顔を覆って泣き出した私を静寂と冬の空気が冷たく包む。






あの時に消えて無くなれば良かった。



2年前、心を失くしたあの日に。




恋をしたと思ってた。きっとまた人を愛せると思ってた。

嘘だ。

心はあの日、失くしたままだったのに。



最後の最後で貴方を信じられない臆病な私は

どうしてあの日、消えて無くならなかったんだろう。




『どうか僕を…信じて下さい』



ごめんなさい、紗和己さん。

私、貴方を信じられなかった。


優しい貴方を傷付ける前に、消えて無くなれば良かった。






「……美織さん」



なのに、貴方は。


どうしてまだ優しい手で私の涙を拭うの。




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