腕枕で眠らせて




…4月って、こんなに暑かったっけ。

ううん、違う。熱い、んだ。



「そ、そう言えば。商品っていつから入って来るんですか?」


上昇し続ける車内の空気に耐えきれなくて無理矢理話題を変えた。


「えーと、来週にはほぼ揃います。国内から仕入れてる物は直ぐ揃うんですけど輸入する商品は幾らかバラつきがあるんで」


素直に紗和己さんも乗ってくれた事で、私の心臓も車の温度もようやく平常に戻る。


「輸入ってやっぱりハンガリーとオーストリアの物が多いんですか?珍しいですよね、雑貨でその辺多く扱ってるのって」


「芸術と歴史に深い国だし良い物多いですよ。それに姉がオーストリアに嫁いんでるんで何かと便利なんです」


一度パチクリと瞬きをしてから身を乗り出して聞いた。


「姉って、もしかして…ユカちゃ、柚果莉さん?」


「そうです。今や立派なウィーン市民ですよ」


懐かしの友の近況にパアッと胸が明るくなる。


「ユカちゃんウィーンで結婚したんだー!!へー!わー!素敵!!」


本当に素敵。良かったね、ユカちゃん。

ああまた連絡がしたいな。今度こそ会ってみたい。


「紗和己さん、私、ユカちゃんに会いたい!」

て言うか。

「って、言うか!どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか」


ユカちゃんの事。

紗和己さんがユカちゃんの弟だって事。


もっと早く知ってれば、ううん最初から知ってたら。



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