腕枕で眠らせて
嬉しくて、嬉しくて。
でも、ドキドキが止まらなくて。
けれど緊張していたのは、私だけじゃ無かったから。
ベッドの上で私の服を脱がせてた紗和己さんは、途中で手を止めると突然ギュウっと私を抱きしめた。
「…紗和己さん…?」
硬く抱きしめながら、紗和己さんは息を大きくふうっと吐き出した。
くっついた胸板から私と同じくらい大きな鼓動が聴こえる。
「…紗和己さんも、もしかして緊張してる?」
後から考えると、男の人に対してデリカシーの無い質問だったと思うけど、でも紗和己さんは
「…当たり前じゃないですか。
ずっと…ずっと好きだった女(ひと)を抱くんですよ。僕だって緊張ぐらいします」
素直に、ちょっと恥ずかしそうに、そう答えてくれた。
「けど…優しく、します。
大切に、しますから」
深い口付けを落とす前に誓った言葉通り、紗和己さんは本当に優しく、私を抱いた。
もどかしいくらい優しく。指も、唇も。
まるで細胞のひとつひとつにキスをするように。
夜空の星が幾度も瞬いて。
秋の温度にふたりの呼吸が溶けていく。
長い長い流浪の夜は
切ない波を繰り返し繰り返して
永遠に終らない世界みたいだった。