腕枕で眠らせて
―――わあ、紗和己さん、ヒゲ生えてる。
一足早く目を覚ました私は、朝陽に照されながらまだ眠る紗和己さんをつくづく観察した。
睫毛、なっがーい。私より長いんじゃないの。うらやましい。鼻、鼻も高いなー。わあ、肌も綺麗だな。何かお手入れしてるのかな。あ、今、口動いた。ムニャムニャ言った。可愛い。
クスクスと笑いを噛み殺しながら観察に夢中になっていると、突然、私を抱えてた左腕にぎゅっと力が籠められた。
「きゃっ」
「…おはようございます、美織さん」
「お、おはよう…起きてたの?紗和己さん」
「ふふふ、今起きました」
今度は紗和己さんがクスクスと笑いながら、もう一度ぎゅっと抱きすくめ私を自分の胸板に押し付けた。
素肌の感触と、柔らかな体温と、彼の匂いと。
幸せと、ときめきに埋もれてしまう。
「…紗和己さん…」
彼の胸から顔を上げて見上げれば
紗和己さんもこちらを見つめて微笑んでいた。
笑った形のまま触れ合った唇は、遊ぶように何度も繰り返して
最後にもう一度「おはよう」と囁き合った。