腕枕で眠らせて





「…腕枕って、すごいと思いません?」



離れ難くて、温かい腕枕の中で朝の光にたゆたっていると紗和己さんが静かに話し始めた。



「腕枕?」


「ええ。だって、これって相手を信頼してないと出来ない行為ですよね、きっと。自分の心臓に寄り添わせて眠るんですから」



そう語った紗和己さんの指が、私の髪をふわふわと優しく梳く。



そっと目を閉じて気持ちを傾けると、トクン、トクン、と彼の音が聴こえた。


本当だ。私、今、紗和己さんの命に寄り添ってる。



「中世とか戦国時代とか、物騒な時代にはもしかしたら腕枕って無かったかも知れませんね。あるいは、この女(ひと)になら命を奪われてもいいって思いでしていたか」


「ふふ、なんだかロマンチック」





嗚呼。でも。分かる。



私が紗和己さんの命に寄り添って

私も紗和己さんに全てを抱かれて。



この男(ひと)だから出来る。




全てを預け委ね、信じて―――


―――信じられているから







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