腕枕で眠らせて
「美織いっぱい傷付いて嫌な思いしたけどさ、楷斗もやっと反省出来たみたいだし。
ここらで仲直りして、せめて元同僚仲間くらいに戻れたらなーって思ってさ。その方が美織もサッパリするでしょう?」
…愛子の人の良さは好き。けど。
私、それには簡単に頷けないよ。
「そーいうこと。な、美織。仲直りしようぜ?」
ほら見て、このペランペランな軽さ。
お通しの梅きゅう食べながら言ってるこれのどこが反省してるって?
私が口をつぐんだままでいると、さすがに何かを察した楷斗が持っていたグラスを置いてこちらに向き直った。
「悪かったよ、あの時は。美織がそんなに傷付いてるなんて思って無かったからさ。
急にお前が会社辞めちゃって連絡も取れなくなって、俺ショックだったんだぜ。
もっと大事にすれば良かったってずっと後悔してた」
どんなに真剣な表情をしたって、湿っぽい声を出したって。
ペランペランな言葉は私の心には響かない。
その言葉が本当なら、もっと早く私に伝える手段があった筈だ。
嘘ばっかり。相変わらず。
けれど。
「ごめんな、美織」
その一言だけは
嘘でもずっと聞きたかった。