腕枕で眠らせて
プルルルル……
コール音が2回鳴って
「もしもし」
繋がった声の温もりに、心が綻ぶ。
「…紗和己さん、急にごめんね。今、大丈夫?」
「平気ですよ。もう仕事終わったんで」
良かった。
ああ。会いたい。会いたいよ、紗和己さん。
「紗和己さん、あのね。今から会いに行っても…」
「美織!!」
突然背中から掛けられた声は、同時に肩を掴まれたせいで、心臓が飛び出すほど私を驚かせた。
「えっ…!?楷斗!?」
振り向くと、ハァハァと息を切らせて私を逃がすまいとばかりに肩に手を置く楷斗が。
「もしもし美織さん?どうかしましたか?」
スマホから聞こえてきた紗和己さんの声に、私は慌てて
「あっ…ごめん紗和己さん、また後で掛け直す!」
と伝えるとそのまま通話を切った。
楷斗はゼエゼエと息を荒げながら、この寒空の下で汗を掻いている。
「お前…勝手に帰ってんじゃねーよ」
乱れる呼吸に邪魔されながらもそう言った楷斗に、私は驚いて目をぱちぱちさせた。
「まさか走って追い掛けて来たの?」
「最初お前探して逆方向行っちまった…あー疲れた」
やっと息が整ってきた楷斗は、手の甲で汗を拭うと不満そうな顔をして私を見つめた。