腕枕で眠らせて



ぽたりと、シーツに涙が滲んで生ぬるく広がった。


泣くのを堪えようと必死に体を硬くしていると



「……美織さん」



シーツの衣擦れの音と戸惑いの色を含んだ声が、後ろからそっと抱きしめてきた。



「…紗…和己さん……」


「…申し訳ありません…今日の僕は意地悪でした」



ぎゅうっと、切なく、大きな手が私の体を抱きしめた。



「嫉妬、してるんです。

貴女を酷く傷付けたのに、今またこうしてその男が貴女を悩ませてるかと思うと。

僕じゃ…僕だけじゃ、貴女を笑顔にし続けられないのかと思うと。

いっそ、きっぱり忘れてくれた方がいいんじゃないかって」


後ろから抱きしめたまま、紗和己さんは苦し気にそう伝えた。


低く静かな声が、吐息と一緒に温かく伝わる。


「…紗和己さん……」


「すみません。僕、本当に勝手なコト言ってますね」


まわされた腕はぎゅうっと力を籠めて私を抱き寄せ、それからするりとほどかれた。


紗和己さんは体を起こすと、パチリとベッドサイドのライトをつけて

「…美織さん」

いつもの穏やかで優しい笑顔で私の涙を拭った。




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