腕枕で眠らせて



立ち上がったついでに、部屋を出てキッチンへと向かう。


3時のお茶には少し早いけど、休憩がてら温かいココアでもい淹れよう。


凝った肩をグリグリまわしながら階段を降りた。ペタペタと静かな家に私の足音が響く。


いつもの事だけど、この時間は当然家族はみんな仕事に行ってて。

シーンとした家にひとりで居ると雨の音が殊更よく聞こえて、寒さが増すような気がした。


あーもう寒い。暗い。冬飽きた。
早く春になってくんないかなあ。



冷々とした窓の外をしかめっ面で眺めながら温かいミルクをカップに注ぐ。

ココアの粉をその上に入れてクルクルかき混ぜると、まあるく渦を描いて白と茶色がひとつになっていった。


ホコホコに甘い湯気にたまらなくなりカップに口を付けようとした時、ピンポーンと小気味良く玄関のチャイムが鳴った。


えー誰よ、こんな時に。


甘いホコホコを待ち構えていた唇を離し、不満気にカップを置く。


廊下のインターホンに向かおうとしたら、なんとチャイムは2回3回と繰り返し鳴らされた。


なに?誰?悪戯?


その奇行に思わず眉をしかめながら見た、カメラに映った有り得ない光景に

「…はあっ!?」


私はすっとんきょうな声をあげてしまった。


だって、だって。


「ちょっと!何してるの!?」


思わず出てしまったインターホンの通話に返ってきた声は


「お、美織?ラッキー、本当にいた」


どうして、どうして、どうして
この声なの。

楷斗なの。




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