腕枕で眠らせて
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ザア、ザアと。
降り頻る雨に混じって微かに聞こえていたシャワーの音が止んだ。
ややしてご機嫌そうな鼻歌と共に脱衣所の扉が開いて、ホカホカとした浴場の空気と共に楷斗が廊下へと出て来た。
「美織、服サンキューな。あ、スーツこのままクリーニング持ってくから袋入れといてくんない?」
うちのシャンプーの匂いを纏いながらペタペタと廊下を歩いて、楷斗は私のいるリビングへと入ってきた。
「なあ、これ弟の服?なんかやたらとデカイんだけど」
「いえ、僕のです。すみません、サイズ合いませんでしたか」
リビングに足を踏み入れた楷斗が、思いもよらなかった返答と光景に立ち竦む。
「急いで持って来たもので。申し訳ありませんね」
私の隣に立って穏やかに笑ってそう言った紗和己さんと、目をまんまるく見開いた楷斗の視線がぶつかった。