腕枕で眠らせて
「私…私ね、楷斗が思ってる以上に傷付いたんだよ。もう二度と恋なんかしないって、誰も信じられないって、ずっと自分の殻に篭り続けてたんだから。
……でも、紗和己さんが助けてくれた。
私の傷ぜんぶ受け止めて、長い時間を掛けてひとつづつ癒してくれた。
そうしてやっと…私、昔の自分と…昔の恋と向き合えるようになった。
いつまでも傷付いた自分に縛られたく無いって。いつまでも昔好きだった男(ひと)を憎んでいたくないって。やっと、やっと思えるようになったの。
もう楷斗の事、嫌いになりたくない。偶然会って、眉をしかめるような仲になりたくない。
だから…だからお願い、これ以上失望させないでよ!」
―――伝えた。
言いたかったコト全部。
自分の中で上手に飲み込めていなかった気持ちが、ストンと心に落ちていく。
きっとひとりじゃ言い切れなかった。繋いだ大きな手が勇気をくれなかったら言葉に出来なかった。
私の言葉に、楷斗は少しだけ泣きそうな子供みたいな顔をしてモゴモゴと口を開いた。
「…俺は別に…ただ…」
彼なりに反論もあるんだと思う。けれども。
「あんな終わり方でも、私、一生懸命恋してたんだからね。
傷付いて全部無かった事にしようと思った時もあるけど、今は違う。目を逸らしたく無いの。
…あの恋があったから今の私がいるんだって。そう思わせてよ、楷斗」
どうかそれだけは、分かって。伝わって。